JEL PUBLIC INFORMATION GUIDE

その「著作権侵害の通知」、本物ですか?
法律事務所を装う不審メール対策ガイド

公開日:2026-10-23 分類:セキュリティ対策ガイド 種別:受信事例・公開情報整理 対象:EC事業者・SNS運営者

一般社団法人 日本ECリテラシー協会(JEL)は、EC関連メディアの運営者に届いた、法律事務所を名乗る不審な「著作権侵害通知」メールの事例と、情報処理推進機構(IPA)等の公開情報をもとに、事業者・SNS運営者が確認すべきポイントを整理しました。

最優先の行動:
「著作権侵害」「法的措置」「別紙資料を開く」などの文言に慌てず、メール中のリンクや添付ファイルは開かないでください。メールへの返信ではなく、独立した公式窓口から真偽を確認します。
事例の確認範囲:
今回の受信者は、問題のリンク・添付ファイルを一切開いていません。そのため、当該メールのリンク先が実際にマルウェアを配布しているか、送信者が誰かについては確認していません。本記事は受信状況に基づく注意喚起であり、個別の送信者や事務所による犯罪行為を断定するものではありません。
JELの問題提起:
著作権を尊重する事業者ほど、法律事務所名や条文を示した通知を重く受け止めます。しかし、法律用語の正しさや整った文面は、差出人の真正性を証明しません。
JELの整理:
「専門家からの通知らしさ」を信じて、メールの外部リンクを先に開いてしまうリスクを、本ガイドでは「法的権威信頼リスク」として整理します。必要なのは、対応を急ぐことではなく、独立した手段による差出人確認です。

この記事でわかること

  • 実際に届いた不審メールの特徴
  • 法律事務所を装う通知の危険信号
  • メールが本物かを確認する安全な方法
  • リンクを押してしまった場合の対応
  • 担当者と組織で備えるチェックリスト

本ガイドの活用場面

  • Facebook・Instagramなどのページを運用している
  • 画像や動画を掲載するECサイトを管理している
  • 著作権侵害、削除請求、損害賠償を告げるメールが届いた
  • 「別紙」「証拠資料」を外部リンクで確認させようとする
  • 社員・外部委託先に対応ルールを共有したい
JEL CONCEPT
法的権威信頼リスク
専門家や法律の権威を信じ、リンクの検証を省略するリスク
STEP 01
開かずに保留
リンク・添付・返信を避ける
STEP 02
別経路で確認
公式の連絡先、プラットフォーム内通知を確認
STEP 03
記録・共有
原本と受信日時を保存し、社内で共有

本ガイドの目的

SNSやECサイトで画像・動画を扱う事業者にとって、著作権の申し立ては見過ごせない問題です。その心理を悪用し、弁護士・法律事務所等を名乗って資料の閲覧を促す不審メールが報告されています。本ガイドは、正当な権利者からの連絡を軽視せず、不審なリンクを開かないまま真正性を確認するための実践手順を示します。

2026年10月19日には、法律事務所を装う著作権侵害メールからZIPファイルのダウンロードへ誘導する事例が公開されています。これは今回の受信メールそのものの分析結果ではありませんが、類似する攻撃手法として参考になります。

1. 実際に届いた「著作権侵害通知」を装うメール

2026年10月、国内のEC関連メディア運営者に、Facebookページでの著作権侵害を主張するメールが届きました。メールには法律事務所を名乗る表現、著作権法の条文、法的対応を示唆する記載があり、「別紙資料を開く」操作へ誘導していました。

今回確認できた事実:
メールが届いたこと、法律事務所を名乗っていたこと、外部資料への誘導があったこと、受信者がリンクや添付を一切開いていないことです。差出人の真正性、侵害主張の真偽、リンク先の安全性は未検証です。
掲載する場合の証拠画像:
受信メールのスクリーンショットを配置する場合は、受信者アドレス、個人情報、リンク先URL、第三者の名誉に影響しうる固有名詞を確認し、必要なマスキングを行ってください。画像未作成のため、本版には実物画像を埋め込んでいません。

2. なぜ偽の通知を信じてしまうのか

2-1. 法律用語で緊急性を感じる

著作権法の条文や法的措置への言及は、受信者に「すぐ対応しなければ」と感じさせます。しかし、条文の記載は差出人の本人確認ではありません。

2-2. SNSページ名が具体的

自社ページ名や運営情報が記載されていても、公開情報を収集して作成された可能性があります。対象が具体的なことだけでは本物と判断できません。

2-3. 資料確認を先に求める

本文で詳しい侵害箇所を示さず、外部サイトの「別紙」や「証拠」を開かせると、危険なファイルや偽サイトに誘導されるおそれがあります。

3. 不審な通知に見られる7つの特徴

1. 送信元アドレスが不自然

事務所を名乗りながら、所属やドメインを確認できないアドレスを使用する場合は要注意。ただし、無料メールだけで詐欺と断定はできません。

2. 対象作品が特定されていない

どの画像・動画の、どの利用が問題なのか確認できない場合は、独立した連絡先で事実確認しましょう。

3. 法的措置を強調する

訴訟や賠償への不安をあおって判断を急がせる文面に注意します。

4. 外部リンクで資料を開かせる

「証拠資料を確認」「別紙資料を開く」などのボタンはクリックせず、リンク先を検証する前に操作しないでください。

5. 実在事務所の名前を利用する

名前が実在しても送信者がその事務所とは限りません。公式サイトで見つけた電話番号等を使って確認します。

6. ログインやダウンロードを求める

資料閲覧のためにSNSログイン、ZIP・実行ファイルの保存などを求められたら操作を中断します。

7. 期限を切り即答を求める

期限の有無にかかわらず、メール内の連絡先だけを頼りに返信・送金・情報入力をしないでください。

4. JEL版:不審な著作権通知の3段階チェック

STEP 1. 開かずに保留する

  • リンクや「資料を開く」ボタンを押さない
  • 添付ファイルを開かない
  • メールに返信しない
  • 送金や認証情報入力に応じない
  • 社内担当者にも安易な操作を控えるよう伝える

STEP 2. 別経路で真偽を確認する

  • 法律事務所の公式サイトを自分で検索する
  • 公式に掲載された連絡先へ問い合わせる
  • Facebook等の公式管理画面から通知を確認する
  • 対象コンテンツや主張を確認する
  • 判断が必要なら弁護士に相談する

STEP 3. 記録・相談する

何もクリックしていない場合

  • 原本・受信日時・スクリーンショットを保存する
  • メールサービスでフィッシングを報告する
  • 迷惑メール処理や削除を行う
  • 関係担当者に手口を周知する

操作してしまった場合

  • リンク先で入力した情報の種類を確認する
  • パスワード入力時は正規サイトから変更し、多要素認証を確認する
  • 不審なファイルを実行した場合は端末のネットワークを切断し、管理者・専門窓口へ連絡する
  • 被害状況に応じて警察・関係機関へ相談する

5. JELが推奨する「5つの基本行動」

1. 差出人名だけで判断しない

表示名、法律事務所名、条文があっても送信者の真正性は別問題です。

2. 証拠資料へのリンクを開かない

疑わしいリンクやファイルは、確認前に操作しないことを優先します。

3. 公式サイトから連絡先を探す

メール本文に記載された電話番号ではなく、独立して確認した窓口へ。

4. 管理画面の通知も確認する

SNS運営会社を装う通知は、メール内のリンクではなく公式アプリや管理画面から確認します。

5. 社内で判断手順を共有する

制作担当、広報、カスタマーサポートが同じ手順で扱えるようにします。

6. 偽の著作権侵害通知・対応チェックリスト

受信直後

  • 外部リンクを開いていない
  • 添付を実行していない
  • メールに返信していない
  • 受信日時・原本を保存した
  • 責任者に報告した

真正性の確認

  • 法律事務所名を独立して調べた
  • 公式サイトの連絡先を確認した
  • 対象コンテンツと権利主張を確認した
  • SNS管理画面の通知を確認した
  • 必要なら法律の専門家に相談した

誤操作した場合

  • クリック・入力・ダウンロード・実行のどこまで行ったか確認した
  • 認証情報を入力した場合は変更した
  • ファイル実行時は端末隔離と管理者連絡を行った
  • 対応履歴を記録した
  • 再発防止を共有した

7. JELの考察

本件の教訓は、「法的に見えること」と「実際に正当な通知であること」は一致しないという点にあります。著作権侵害の申し立てそのものは真剣に確認すべきですが、メールに記載されたリンクを開くことがその第一歩である必要はありません。

JELではこの問題を「法的権威信頼リスク」と整理します。開かない・別経路で確かめる・記録するという3つの行動を標準化することが、EC事業者やSNS運営者のリスク低減につながります。

また、公開情報を悪用した個別化された通知も考えられるため、会社名やページ名が正確に記載されていることだけで信頼しない姿勢が重要です。

8. 参考にした主な公開情報

9. 免責・注意事項

本ガイドは、EC事業者・SNS運営者に向けた一般的な注意喚起であり、個別メールの真贋や法的責任を確定するものではありません。

  • 今回の受信メールについて、リンク先や送信元の技術的検証は行っていません。
  • 正当な著作権侵害の申し立てが存在する可能性は排除せず、独立した窓口で確認してください。
  • 個別の法的判断や感染調査が必要な場合は、弁護士・セキュリティ専門家等へ相談してください。
  • IPA・警察庁その他の関係機関による監修・認定・推薦を受けた記事ではありません。